時々空中へ舞ひ上がつてゐる。

好きなものについて考え続け脳内迷子のパラノイア雑記

『寒山拾得』芥川龍之介

龍さんの漱石先生好き。

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『寒山拾得』『東洋の秋』芥川龍之介.寒山拾得図は伊藤若冲で目にしたことがあり。わー、かわいい と漠然と覚えてただけであったのだが。いろいろな方がこの二人を題材に作品を残されている。中国の禅僧で、寒山は文珠菩薩、拾得は普賢菩薩の化身、とか。.先に鷗外先生の『寒山拾得』『寒山拾得縁起』を読んでいたのだけれど。今回は龍さん。この2つの作品はいずれも龍さんが寒山&拾得を東京の町中で見かけるという話。『東洋の秋』は『寒山拾得』を下地にしてるのかしら。..『寒山拾得』漱石先生んちに遊びに行った帰り「何処かで偶つたような気が」する二人の男を見かける芥川。隣にいた男が「やあ又寒山拾得が歩いてゐる」と言うので、今時分本当にこんなとこにいるのか、と問うと「私はこの間も商業会議所の外で遇ひました」と答え、「ああ見えたって、ありや普賢文殊です。あの友だちの豊干禅師つて大将も、よく虎に騎つちや、銀座通りを歩いてますぜ」と言う。.漱石先生んとこに行った時、先生は「今、護国寺の三門で、運慶が仁王を刻んでゐるのを」見たよと言っていた。芥川は、この忙しい世の中に運慶なんぞどーでもよいわと浮かない顔の先生放ったらかしで熱くトルストイやらドストエフスキーやらロシア文学について語りちらし。.でもその帰りに自分もなんかそんなSF(すこしふしぎ)に出会っちゃって。漱石先生におれは飯田橋で寒山拾得見たっすよ てなお手紙をかーこう と思ったりしている。..漱石は『夢十夜』第六夜に運慶が明治の今も生きているという話を書くのだけれどそれはまた別のお話。..『東洋の秋』日比谷公園を散歩している芥川の行く手に、篠懸の落葉を掃き集めている二人の男が見えてくる。その風貌からは公園の人夫とは思えず、様子を見ていてはたと気づく。あれは寒山拾得であると。.「寒山拾得は生きてゐる。永劫の流転を閲しながらも、今日猶この公園の篠懸の落葉を掻いてゐる。あの二人が生きてゐる限り、懐かしい古東洋の秋の夢は、まだ全く東京の町から消え去つてゐないのに違ひない。売文生活に疲れたおれをよみ返らせてくれる秋の夢は」。.「云ひやうのない疲労と倦怠」、「寸分も休みない売文生活」をして「おれの創作力の空に、空しく黄昏の近づくのを」待つだけなのか と。この先、書く力が尽きてしまうかもしれないことへの言いようのない不安。.それが寒山拾得との不思議な出会いにより、疲労倦怠に代わり静かに悦びを得て、口笛を吹きながら公園の門を抜ける。..公園という異世界から、死に向かうかもしれない自身への漠然とした不安からの生還。.そして、やはり東方の人な龍さん。あと、『沼』『尾生の信』とのなんてぇのかな、こう...。匂いっつうか、その、ね。←語彙力..#読書 #読書記録#books #bookstagram#芥川龍之介#芥川竜之介#芥川散歩中#夏目漱石#夢十夜#青空文庫#伊藤若冲#寒山拾得図