時々空中へ舞ひ上がつてゐる。

好きなものについて考え続け脳内迷子のパラノイア雑記

『寒月の「首縊りの力学」その他』中谷宇吉郎

いやぁ。もうこういうの好きですよ。

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『寒月の「首縊りの力学」その他』中谷宇吉郎.理学博士であり、世界初の人工雪製作に成功された方であり、寺田寅彦の弟子(寅彦氏が大学の指導教官)。随筆集『冬の華』に、”寅彦先生に関することども”をいくつか載せられていて、そのうちのひとつ。.そう、冬の華。ハナ違い。←何の話かねちなみに『冬の華』の序を小宮豊隆が書いているというね。この本欲しいぃ。.水島寒月君。『吾輩は猫である』の登場人物。「吾輩」の飼い主である珍野苦沙弥先生の家に出入りする元教え子。正月に椎茸を食べ前歯を二本折った青年。.中谷氏曰く、水島寒月は寅彦先生がモデルとされているけれど、人物そのままがモデルにされてるわけではないのだよ という話でした。漱石先生に理学ネタをいくつか提供していて、それが寒月君を通して見事な使われ方をしているのだ、とのこと。でも椎茸で前歯折るのは寅彦氏の実話。.ネタ提供というより、それこそ寒月君と苦沙弥先生との雑談のごとく、普通にお話をしている中で、漱石がぐっときたものを取り入れたということのようです。木曜会結成前からの長いお付き合いな2人。良きです。.で。「首縊りの力学」。『猫』で寒月君が今度理学協会で発表する演題を聞いておくれと先生の御宅でお稽古演説したくだり。絞殺処刑を描いた「オジセー」の二十二巻の描写は力学的に成立しないがそれを証明するとか、首を縊ったら背が一寸伸びるとか。寒月君が話をすると、合間に必ず先生と迷亭さんのちゃちゃが入ってちっとも話が進まず、そこがとても面白いのだけれど。.中谷氏はその演説内容の元となる論文が存在すると紹介している。そして、その論文の内容が忠実に寒月によって語られている、と。途中長く方程式が書かれているところは、『猫』では「ずんずん略すさ」と苦沙弥先生が寒月君を遮りすっとばさせているが、さすがに漱石もここの描写を飛ばすのは致し方なかったのだろう、とのこと。.中谷氏が原論文を探し出し、読んで寅彦氏に報告したそうで。「先生は上機嫌で、”そんな所が確かあったようだったね、夏目先生も其処迄御分りになったのだろう”と笑われたことがあった」..漱石は文学者であるが同時に理系脳も持ち合わせていた というのはよく言われることです。「以上の話は漱石先生がいかに色々な材料を美事に処理されたかという一例にもなり、またどのような話でも、よくその本質を理解されていたということを示す例としてもみることが出来ると思われる」.寺田寅彦は理学者であるけれど同時に文系脳も持ち合わせていた という点でお互い心通じるものがあったのでしょうね。..さて。やっと『猫』の再読も終わった。長かった。でもやっぱ面白かったの。またいつかあれこれ書きますよ。..#読書 #読書記録#books #bookstagram#中谷宇吉郎#寺田寅彦#夏目漱石#吾輩は猫である#青空文庫