時々空中へ舞ひ上がつてゐる。

好きなものについて考え続け脳内迷子のパラノイア雑記

『高瀬舟』『高瀬舟縁起』森鷗外(7月23日記)

『高瀬舟』『高瀬舟縁起』森鷗外.とある事件で『高瀬舟』を思い出したので再読。喜助の思いはもしかしたら誰もが感じるものなのかもしれないとは思う。罪を犯したがために自分の人生において初めて得られたまとまったお金(島流しの際お上から受ける当座の生活金)のことを話す様子や、弟殺しをしているのにも関わらず心が晴れやかであるというのが微妙に喜助さいこぱす説を生み出したりもしてるけれど鷗外は別にそのようなつもりをしていた訳ではなさそうで。.自作解説である『高瀬舟縁起』では、「どんな場合にも人を殺してはならない。」としてからこのように語っている。ーーーーここに病人があって死に瀕して苦しんでいる。それを救う手段は全くない。そばからその苦しむのを見ている人はどう思うであろうか。たとい教えのある人でも、どうせ死ななくてはならぬものなら、あの苦しみを長くさせておかずに、早く死なせてやりたいという情は必ず起こる。ここに麻酔薬を与えてよいか悪いかという疑いが生ずるのである。その薬は致死量でないにしても、薬を与えれば、多少死期を早くするかもしれない。それゆえやらずにおいて苦しませていなくてはならない。従来の道徳は苦しませておけと命じている。しかし医学社会には、これを非とする論がある。すなわち死に瀕して苦しむものがあったら、らくに死なせて、その苦を救ってやるがいいというのである。これをユウタナジイという。らくに死なせるという意味である。高瀬舟の罪人は、ちょうどそれと同じ場合にいたように思われる。ーーーーー..#読書#読書記録#books#bookstagram#森鷗外#青空文庫.それにしても。安楽死、尊厳死と優生思想を混濁させるなよそれを願った本人の思いを利用しているだけではなくその方の個人の尊厳など丸無視した単なる殺人ではないか。