2019-12-04 『懸巣』室生犀星 読書 『懸巣』室生犀星.前回postの続きのようなもの。今回は犀星さんと鳥。.カケス、である。現在は野鳥を飼うことを禁じられているけれど。当時は気楽に飼っていて。このときはヒヨドリと懸巣を飼われていて。.犀星さんは懸巣のことを「彼女」と呼んでらして。声や音を真似て出すのだそうだ。面白い。懸巣に会ったことも声を聴いたこともない我は大変しみじみと羨ましいと思ったり。.懸巣がひとり静かに練習したりなどもする。「私と客と話をしていると直ぐ話し声を真似して非常に低い声でぶつぶつ囁いている。囁きながら自分でも苦心するらしく、遣り直し遣り直し遣っている。」またそれを邪魔せずじっと耳をそば立てている犀星さんを想像し悶絶する我。.鴉も鶯もそっくり真似してしまう。一緒にいるヒヨドリの真似もするので聴いてるだけだとどっちがどっちかわからなくなると。近隣の猫までも。「美事ににゃあん、にゃあんと鳴くようになった。これは傑作の方で本物の猫の声よりも美しかった。」お宅の猫ですか? と客に聞かれて嬉しい主人。.音のある雨の日、しかも大降りになるほどよく啼く彼女。言ったことをすぐ覚える。かけちゃん、むろうさん、なんじゃ・なんじゃ、ぴりぴりetc. 日々の懸合い。.でも人の顔を見せると真似をしない。顔を合わせずに声をかけ合っている間はなんでもないのだけれど、籠のそばにひとが近づくともう「黙りこくって大きな眼でぐっと見ているだけ」になる。もう少し距離を縮めたいところだけれど。.日常のご様子が垣間見れてグッときた一節を。.「そのほか、得体の分らぬ鳴き声をするが、一つは娘の弾くピアノの真似らしく一つはラジオの音楽の真似らしい。お昼の時に私はパンと林檎をかじりながらニュースを聞いているそばで、彼女も林檎をふくんでラジオを聞いているが、すこし首をかしげて不思議極まる顔附で聞き入りながら、自分でも耐えられずに何か糶り合うように啼き出すのである。」.林檎を口にふくみながらラジオを聴くカケスとその隣で一緒に林檎をかじる犀星さん。萌える。もうめっさ妄想しがいのあることばっか書くなこの方。..#読書 #読書記録#books #bookstagram#室生犀星#青空文庫