時々空中へ舞ひ上がつてゐる。

好きなものについて考え続け脳内迷子のパラノイア雑記

『牛肉と馬鈴薯』『岡本の手帳』国木田独歩

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『牛肉と馬鈴薯』『岡本の手帳』国木田独歩.『予が作品と事実』で、独歩は『牛肉と馬鈴薯』について、登場人物は上村と近藤以外には実際のモデルがいて、舞台もモデルがあり、ああやって集まってぐだぐだわいわいやってたのも実際よくあったことで、そこから話を膨らませていると言っています。岡本はまんま自分で、北海道の話も自分の体験からくる、と。.さて。独歩はずっと宇宙の存在の不思議、天地自然についての驚異、人間という自己の存在そのものについての問いを常に抱いていたと申しました。これは独歩の根本的な問題となり、科学的な究明の道へ進むとか、敢えて見ないように避けて世間の波に流れるとかはせずに正面から見据え続けています。.独歩はキリスト教への道へ進むのですが、熱心に神を信仰をするというよりも、「不思議を不思議と思い続ける」ための拠り所としていたような感覚です。宗教家、科学者、哲学者でもない、不思議の解明や納得や妥協をせずにただその不思議さをそのまま全身全霊で感じ続けていたい、と。.『牛肉と馬鈴薯』に登場する岡本という青年にその思いを語らせています。.「宇宙の不思議を知りたいという願ではない、不思議なる宇宙を驚きたいという願です!」「僕等は生れてこの天地の間に来る、無我無心の小児の時から種々な事に出偶う。毎日太陽を見る、毎夜星を仰ぐ、ここに於いてかの不思議なる天地も一向不思議でなくなる。生も死も、宇宙万般の現象も尋常茶番となって了う。哲学で候うの科学で御座るのと言って、自分は天地の外に立て居るかの態度を以てこの宇宙を取扱う。」「即ち僕の願はどうにかしてこの霜を叩き落さんことであります。どうにかしてこの古び果てた習慣の圧力から脱がれて、驚異の念を以てこの宇宙に俯仰介立したいのです。」.この願いをより詳細に伝えているのが『岡本の手帳』です。岡本の手帳に書いてあること という形で自分の思いを発しています。..『不可思議なる大自然(ワーヅワースの自然主義と余)』でこのようにも述べています。ーーーーーー悠久にして不可思議なる、生死を吐呑する、此大宇宙、爾が如何にもがきて飛び出さんとするも能はざる此大自然、事實中の大事實當面の眞現象に就ては何等の感想をも懐かない文人が如何に巧に人間の事實を直寫したからとてそれは一藝當たるに過ぎない。斯くて文藝何の値ぞ、所謂る自然主義何の値ぞ。ーーーーーー独歩が「自然主義」と括られたがらないのも、自然をただ描写することではなく、この大宇宙大自然というでっかい存在に対する驚異心を描きたいからで。解釈やカテゴライズの無意味さ。岡本いわく「世の中の主義って言う奴ほど愚なものはない」ね。独歩は独歩であるよ。唯一無二。..#読書 #読書記録#books #bookstagram#国木田独歩『牛肉と馬鈴薯』は青空文庫でも読めます。無料ですのでぜひ。返魂香、欲しいなぁと本気で思ってたころもあったのをふと思い出し。あと、「ヒヤヒヤ」を再普及させたい。ひとの語りに耳を傾けよ。謹聴謹聴!