時々空中へ舞ひ上がつてゐる。

好きなものについて考え続け脳内迷子のパラノイア雑記

『琴のそら音』夏目漱石

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『琴のそら音』夏目漱石.読書もぽつぽつしているのですが、何しろ最近の宮本ラッシュなどで忙しい脳内です。かつての我の日常はほぼ音楽で、読書は現実の逃避先でした。なのであまり深く考えずに済む(考えることができない)海外小説を好んだのかもしれません。あ、森博嗣先生は集中して読むので完全に音楽と切り離される瞬間を持ちたいとき、脳内リセット目的で耽溺していました。..さて、久々の夏目漱石。短編です。そう我は漱石先生の描く男達の会話がもう好きムリなのであるな。という訳で、津田君と靖雄(「余」)のお話をニコニコしながら横から見ていたい。法学士で今は勤め人である靖雄と、文学士で大学に残り心理学(幽霊方面)を研究している津田君のちょっと身近な迷信話。怪異譚とまではいかないところ。津田君の言葉で靖雄の日常が非日常に書き換えられてゆく様子が面白いです。家に雇っている「迷信婆」の言葉も、津田君とのやり取りがあったせいであながち馬鹿にできないものかもしれぬとどんどん不安になってゆく常識人の揺らぎ。..「琴のそら音」。琴を弾くことで魂を招くという日本の神話の神懸りとなんか関連あるのだろうか。作中には琴の音について何の記述もなく。空音という実体のものではない音。琴の空音を感じるとき、思っているひとの魂が引き寄せられ、遠く離れているそのひとの死を…? うぬぬわからぬ。..そういえば漱石の描く音も好きである。音の描写によく脳内アンテナを向ける我ですね。音フェチですから。言葉で音をどう表現するか。その音の描写でどう心理状態を表現するか。犬の遠吠え、鐘の音。静寂の中で耳を研ぎ澄ませる靖雄。不安の増幅。..では、今回は音ではなく声の描写にぐっときたこちらを。靖雄の未来の奥さんである露子がインフルエンザに罹ったと聞いたときの津田君の「インフルエンザ?」と大声で聞き返した後の一節。ーーーーーーー「よく注意したまえ」と二句目は低い声で云った。初めの大きな声に反してこの低い声が耳の底をつき抜けて頭の中へしんと浸み込んだような気持になる。なぜだか分らない。細い針は根まで這入る、低くても透る声は骨に答えるのであろう。碧瑠璃の大空に瞳ほどな黒き点をはたと打たれたような心持ちである。ーーーーーーー.ああ、ちなみに読書中に脳内変換されているCVについて言ってみるテスト。今回の「琴のそら音」。「津田君」はそのまま #津田健次郎 さんで、「靖雄」は #羽多野渉 さんでした。さあいつもここに来てくださる方には誰が誰だかですね。声フェチです。なんならこの方たちは脳内を自在に明治青年コスで動いている。津田さんなどは、人を煙に巻くような雰囲気がまんま津田君じゃねぇかとか。骨に答える低くても透る声…! たぶん我は朗読劇とかツボなんだろうけれど、実際会場に行って聞き取れるかどうか(涙..#読書 #読書記録#books #bookstagram#夏目漱石#青空文庫